PRUNING TREES

trees know how they shold be

​剪定について

 樹に鋏を入れる仕事に就いて十余年。剪定の技術が身につくにつれて、植物がこの先どのように生長していくかが見えるようになり、見えるからこそ無闇に枝を切れなくなりました。必要最低限の剪定を施すことで、庭という限られた空間で樹木の生長をコントロールし、管理し ていく技術をたしかに身に着けているという自負もありました。そのはずが、やはり単一の環境にとどまることによる、感覚の鈍りが少なからずあったのだと思います。植木に鋏を入れて管理する、そんな「常識」に無意識に囚われている事に気づいたのは、あるひとつの庭との出 合いでした。


 その庭には、とても庭木向きとは言えない大木が何本も植えられていました。ケヤキ、エノキ、 タイサンボク。大きくなりすぎるという理由で、さまざまな場所で痛ましい仕打ちを受けるこ とも多いこれらの樹木が、建物のすぐそばで、じつに伸びやかに育っています。いくつか見ら れる切られた後は、おそらく窓にあたる部分や建物に接する箇所など最低限の剪定の跡でしょうか。下を見ればセイタカアワダチソウ。これまで自分が仕事で「雑草」として処分してきた ものが、明らかな意図のもと、その場所をあてがわれていました。ありふれた植物がひしめく 空間。その植物の魅力の引き出し方に強く胸を打たれ、自分がいかに植木屋としての常識に縛られていたか、そこに棲む自由な植物と、庭の持ち主に気づかされることとなりました。


 それからは、これまで以上に鋏を入れることに慎重になりました。敷地という限界や、建造物という障害物が避けられない植木にとって、完全な放任による自然樹形の形成は難しいことです。そのような、ある程度の人の手の介入がどうしても求められる状況下で植物の魅力を十二分に生かすためには、時に「切らない」ことを選択したり、その「庭」にとって大切な枝や幹を生かすためにその他を「切る」ことを選択したりと、常に植物の生長の先を捉える射程の長い視点が求められます。ですが、そんなに難しく考えることはありません。植物は自由に育つことで自然と魅力的になるのです。人が手を入れるのは必要最小限であることを念頭に置けば、植物は自然とその魅力を増し、生活に寄り添ってくれます。以下に、そのような剪定の技術のいくつかを紹介します。

 

「庭における自然樹形」を再考する


 近年、これまでの伝統的な和風の庭園に用いられてきた仕立ての木(松や槇など)とは対称的に、現代の住宅と相性が良く、やわらかな印象の自然な形の樹木が多くの人に好まれる傾向にあります。そして、私もそのような樹木を用いた庭を造っています。自然な形、つまり自然 樹形とは一般的に自然の中で人の手が入ることなく自由に育った木々の形を指します。しかし、 先に書いたように庭にはさまざまな条件があり、放任できない以上は「庭における自然樹形」 というものを、あらためて考えてみるべきではないかと思うのです。
 

 まわりに大きな障害物のない山の中の樹木たちは光のあるほうへ枝葉を伸ばし、周囲の木々 と競り合ったり、譲り合ったりしながら自らを形作っていきます。これがいわゆる自然樹形の 基本的な認識です。では、樹木のすぐ後ろが岩壁であった場合、そこにおける自然樹形とはど のようになるでしょうか。岩壁のほうの枝は擦れたり、日照不足で枯れたりしていき、もう片 側の枝だけがどんどん育っていくはずです。一般的なふわっと全体に広がった樹形ではありま せんが、片側に岩壁のある環境においてはこの樹形こそがこの樹の自然樹形です。大型のトラックが頻繁に通る道沿いで、トラックの背丈にあわせたようにぽっかりと空間ができていて、そ の上に枝が繁っている、そんな自然樹形もあります。 つまり自然樹形というものは樹木に外的に作用する環境に依存したものであると言えます。重要なのは自然樹形の形成における外的な要因は、周囲の木々、岩壁、またはトラックであった りと自然物、人工物にかかわらず等しく樹木に作用するという点です。
 上記を踏まえて言えることは、庭における自然樹形をかたちづくる外的な要因のひとつには、 必要最小限度で介入する人の手も含まれうるということです。それは樹木にとっては枝に羽を休めにきた鳥や、雨の降る前に吹き始めた強い風が小さな枝を折ることと同じく受け取られ、 だからこそ樹木にとって負担にならず、自由な生長を妨げることのない手入れが実現できると 考えます。

 


ご自宅でできる最小限度の剪定


 それでは、具体的にどこをどのように切るのが望ましいのでしょうか。  まずは、私たちの生活動線に関わる枝から考えていきましょう。つまり普段、庭でよく歩く ところに差し掛かってくる枝のことです。自然風の剪定をうたう一般向けの書籍には、枝抜き によって枝先に切り口を作らないことで自然な形を維持する手入れについて書かれることが多 いですが、これらの枝を根元から取り除いてしまうと、残された枝の生長に悪い影響を与える場合もあります。樹のあるべき形は、樹が一番よくわかっているということを前提に、歩くのに支障をきたす部分のみを切るという意識が重要です。 同じように家の壁に当たる部分や、越境して隣家に入り込む枝についても同様です。その部分 だけを切る。翌年もまた同様です。切った個所には不自然な印象が残りますが、ほかの枝が完 全に自然な形であることで、目立たなくなります。
 また、繁ってきた枝をすこしすっきりさせたいときは、隣の枝と重なり合っているところだ けを切るといいでしょう。この場合は残したい枝に重なる部分だけを切りますが、ここでも剪定は最小限にとどめましょう。残された枝の負担も小さくなります。
 以上が私がおすすめする、ご自宅でできる植木の手入れの方法です。基本的には「切らない」ことで樹が自らのおかれた環境にあわせて変化していくものとしながらも、そこにかかわる人間自身がその環境の一部となって樹木とふれあい、樹木を感じる。そのような樹木との関係のさきに形づくられるものが、魅力のある自然樹形であり、素敵な庭であると信じています。

 

 

 

 

 

ヘッディング 1

WATERING PLANTS

key to keeping them healthy

植物の水やりについて

ヘッディング 1

涼やかな樹形の雑木たちは、まったくの自然環境ではない庭という空間で健やかに育つための 手助けとして日々の水やりがどうしても必要となりますが、ゆくゆくは自然に降る雨の水だけ でも元気に育つようになってほしいものです。以下はそのような水やりの方法の手引きです。

 

 

季節による水やりの加減
上図にあるように、植物には水分がたくさん必要な時期と、そうでない時期があります。落葉 樹は冬から春にかけては休眠状態となるので特に水やりの必要はありません。常緑樹も落葉樹 ほどではありませんが活動を抑えているため、雨がしばらく降らなかった場合を除いては水や りの必要はありません。対して、春から夏にかけては水やりを増やしていく必要があります。 特に夏の時期は様子を見ながら一日二回与えたり、一回の量を多めにするなどの工夫が必要で す。なお、植え付け後しばらくの水やりは特に注意が必要です。

 

 

水やりのコツ

今ではホースで水やりをする方がほとんどだと思います。ホースのヘッドはシャワー、もしく はジョウロのように出るものにします。植物が深いところで根を張れるように、しっかりと土 の中まで浸透させていくイメージで水やりを行ってください。また、植物は根以外からも水分 を吸収できるので葉っぱや幹に直接水をかけてもいいでしょう。特に葉水は病害虫の予防にも 効果的です。
 

 

私たち人間も外の暑さ寒さによってその日飲む水分の量や、身に着ける衣服が変わるように、 植物に必要な日々の水分量も一定ではありません。植物の種類、植えられた環境、土壌の状態 は様々である以上、上記に限らず水やりの方法論はあくまで目安です。ほんとうに大切なのは、 葉の状態や枝の様子をよく観察することで、水やりを加減する感覚を身につけること、つまり 植物と一緒に暮らすためのリズムを自身のなかに持つことではないでしょうか。庭を持つこと のいちばんの楽しみや喜びは、そのような植物との共生のうちにこそあるように思います。

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